<松田優作と私>  

松田優作。生前の彼を私は「ジーパン刑事の人」ぐらいしか見ていなかった。あとはギャッビーのCM「泡にてスタイリング、ギャッツビー・ヘアスタイリングフォーム3タイプ。」、トライアングルのCMも覚えているな・・・そう考えるとこの頃から何となく気になっていたのかも。そしてあのときから私の彼を見る目が変わった。

 日テレで『華麗なる追跡』が放送された。フローレンス・ジョイナーとの共演で話題になったのを覚えている。世界一速く走る女性と走りの上手い役者。(そして二人ともこの世にはいない。チャップリンの『ライムライト』とこれは未だに私は観ることが出来ない。)

 それから「おしゃれ30・30」という古館伊知郎と阿川泰子のトーク番組に出た。日テレでの彼のドラ マ『太陽にほえろ』と『探偵物語』の映像を交えながらのお話であった。その3日後ぐらいに彼はこの世を去った。1989年11月6日。翌週の「おしゃれ30・30」で再放送された。彼の死後この番組を見るとかなり残酷な内容だった。ジーパン刑事の殉職シーンを三人で見ている。そしてあの有名なセリフ「・・・なんじゃこりゃ!・・・俺死にたくないよ。なぁ、ちょっと待ってくれよ。」その映像を黙って見ている優作の顔がアップになる。私にはとてもショッキングな出来事だった。死というものの残酷さ、生命のはかなさ。彼に一気に引きつけられた。そして彼の映画を観まくった。そしてシビレまっくったのだ。なんてかっこいいんだろう!

 彼の走る姿が好きだった。すらっと長い足の運び方。『俺たちに墓はない』での階段をかけあがるシーン。階段があれば何回もマネをした。『蘇る金狼』で投げ飛ばしたゴルフクラブを取りにいく走り方。『横浜BJブルース』冒頭で真夜中の道を走る姿。なんてきれいに走るんだろう。夜に何回もマネをした。

 あの長い指。拳銃を持つ手。『野獣死すべし』でのピアノを弾く指の動き。何回もマネをした。笑いのセンスも最高だった。『薔薇の標的』ワンシーンだけなのにあの空気。彼の影響で私も芝居にどっぷりはまることとなり、今もごらんの通り。でも優作のおかげでこんな楽しい世界に入り込めたのをとても感謝している。そんな11月の雨の日です。そうだ。雨の日にはブルースを聴こう。

 (2001.11.6)